「正直、マッチングアプリで出会ったこと自体がダメだったみたい…なんか、運命じゃないっていうか…自然じゃない。」
これは私が実際に婚活を通して出会った男性に言われた言葉である。35歳の人でも運命とか口にするんだなあ。
でもこう考える人は男女問わず少なからずいると思う。マッチングアプリの登録や婚活パーティの参加にためらう理由の一つとして、「自然な出会いじゃない」というのがあるのはなんとなく想像がつく。
じゃあみなさん、いったいどんな出会い方をご希望で？
本屋で高い棚にある本を取ってくれた人に、連絡先を聞けますか？
運命的な出会いの代表例、「本屋で高い棚にある本を男性が取ってくれる」。みなさん、こんな出会いをもしかしてご希望？
百歩譲って、背の高い男性（実際にはあまりいない）が、本屋（今時そんなに存在しない）で、高い棚にある（紙の）本を取ってくれたとしよう。
そして千歩譲って、その本についての会話が少しばかり行われたとしよう。そこで。
あなたは彼に「今度お茶でも」と提案する勇気はあるだろうか？
もしくは彼がLine交換をあなたに提案してきたらどう思うだろうか？
ナンパと思われるか思うかどっちかだぞ、やめとけ。ってなる。
実はこの知らない人に話しかけるシチュエーション、欧米だと頻繁にある。スーパーのコーヒーコーナーで豆をじっと眺めていると、おばちゃんが「これがおいしいわよ」と唐突にアドバイスをくれることは日常茶飯事。バス待ちなど、時間があればまあまあ話す。場合によっては今度お茶しよ、なんていうのは、とっても「自然」。
しかし、悲しいかな、私たちは日本で生まれ育ってしまった。「本屋で高い棚にある本を取ってくれた人」と「ありがとうございます。」以上の関係に進むのは、はっきりいって「不自然」であり、「運命」どころかナンパでしかない。
お見合いが当たり前だった時代
本屋で背伸びを繰り返すのも、道でハンカチを落としまくるのも個人の自由だが、ちょっと立ち止まって考えてみて欲しい。
私たちが「運命的な出会い」と思ってるものって、誰に教わったものなの？
いやみんな、ドラマや映画の見過ぎでは？
そもそも、自由恋愛が一般的になったのはここ最近の話である。私たちのおじいちゃんおばあちゃん世代はお見合いが当たり前で、会ったその日に結婚なんてこともあった。今考えるとすごいことだが、その時代の「自然な出会い」である。
言論の自由、職業選択の自由、その他もろもろの自由を手に入れた私たち世代は、選択肢が多すぎるあまりに、その選択の責任を自分で負わなきゃいけない恐怖さえ感じてる。もう誰か、私の生きる道これだって決めてくれ。
結婚の自由を手に入れたことで、出会いの自由にさえ理想を抱かされるようになってしまった。
何百人、何千人の中からマッチングしたのです。
本屋やハンカチの例は少々極端だったかもしれないが、俗に言う「自然な」出会いとは、学校であったり職場であったり、社会人サークルであったりするのだろう。
では、学校もとうの昔に卒業して、職場もほぼ同性しかいない状況で、特に人と関わる必要もない趣味を持っているような人（結構こういう人多いと思う）は、やっぱり本屋で背伸びか道でハンカチ落としをするしかないのか？加えてコロナ渦で、職場と家の往復どころか職場にさえ通勤しないテレワーク環境である。
そんな中、今やマッチングアプリや婚活パーティはもはや新しい「自然な出会い」のカタチになりつつあるのではないか？
私は、婚活で出会う人それぞれに、運命というか、巡り合わせのようなものを感じている。だって、登録者数が何万人何千人といる中で、何百人からいいね！をもらって、実際に会うまでにたどり着いたひとたち。オンラインだからこそ出会えたひとたち。これがどうして恥ずべきものだっていうんだろう。
そろそろテレビ局はマッチングアプリで出会った男女の恋愛ドラマを制作してくれ。
2人の出会いをいつか「運命」にする
漫画やドラマ的なシチュエーションで始まったから、運命と呼べるってわけじゃないと思う。
だって、高校生や大学生のときから付き合っているカップルは、「自然」で「運命的」にも感じるかもしれないが、蓋をあけてみれば、学生の勢いで寝ちゃってズルズル関係が続いて今に至るみたいなこともよくある。深夜1時に始まった恋愛は果たして自然だろうか？
でも信頼関係をじっくり築いて、結婚して、数十年たって家庭をみたときに幸せなら、その出会いは運命と呼べるものになるのではないか。それがハンカチ落としから始まっていても、マッチングアプリから始まっていたとしても。
私たち、あのときああして出会ってたのは運命だったね。
と、何十年後かに言えるような、ほのぼのした夫婦関係を送っている未来を想像して、私は今日も婚活に励みます。
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